両爬虫道を往く

博士にもひとかどの生き物屋にもなれなかったおじさんの日記帳 誤同定等ありましたらお気軽にコメントどうぞ

今更だって知ったもんか 後先なんて知ったもんか

南西諸島遠征第4弾.

 

8日目.

 

本島からフェリーに飛び乗って奄美に着くまでには10時間くらいかかる、故に必然的にいろいろ考えてしまう。2週間も卒論をほっぽって行方をくらませて大丈夫なのか(進捗は問題なかったが研究室での人権的に問題大有りだった)とか、就職したらもうこんなことできないだろうとか…

 

気がめいってきたのでネットサーフィンに切り替える…が、ぼくが欲しい虫はあまり採れていないらしい。3日前に大発生してそれっきり。今年はもう終わりなんて書いてるブログまである…

 

…何も考えたくなくてふて寝していたら名瀬についていた。

 

名瀬着岸が20時半ということもあり、港近くで24時間営業のレンタカー(!)を探して車を借りたのだが、燃費があまりにも悪すぎて閉口した。それ以外の部分では申し分なかったので、今後の利用候補には残るけど。

 

まあ大したトラブルもなく車を借りることができたので、先に奄美入りしていた後輩のT君(セミと蝶)を拾いとある林道へ。

 

ムシを探しに…というわけではなくアンケートを取った結果、同行者が奄美の希少動物を見たいとのことだったので、昨年見つけた大正義ポイントを案内しようというわけだ。

 

雨が降っていたからか狙いの生き物はすぐ見れた。

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オットンガエル。奄美にしかいないが奄美にはたくさんいる、天然記念物らしいカエルである。

写真だといかついがなかなか面白い顔と体型をしている。

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アマミイシカワガエル。国内最美麗種と名高いが実際そうだと思う。カメラを持ってくればよかったと後悔しっぱなしである…

 

とまあやはり梅雨だからか大型のカエルが路上に現れており、充実した時間を過ごすことができた。

 

そしてまあもちろんというかなんというか「車を躱せないくらいどんくさいのに写真を撮ろうとするとすぐ逃げるくそったれウサギ」ことアマミノクロウサギも大量に居た。10分に1頭のペース。写真はないが…

 

後輩たちは「可愛くない」「どんくさい」などと不平不満を述べていた笑 

 

個人的には愛嬌があってよいと思うが、写真を撮らせてくれないのと側溝から急に飛び出して車と並走する(九州の野ウサギも全く同じムーブをする)のは本当にやめてほしい。ぼくじゃなかったらロードキルもんですよ。

 

虫は採れなかったがそこそこいい思いができた。帰り道に前が見えないほどの大雨が降り先が思いやられたが…

 

この日は奄美市提供のWi-Fiが使える駐車場で車中泊。きつかった。

 

9日目.

朝早起きして吹き上げポイントへ向かう。すっきりしない天気だったがまあ…飛ぶんじゃない?という天気。

 

話によると例のポイントには早朝から虫屋がひしめき合っていて見たらわかるとのことだったが、さてどうでしょうか。

 

7時ごろポイントの林道を走った。

…が、誰もいやしない。まさかもうヤツの発生終わったのか!?とがっくりしながら林道入り口でうだうだしていると、いかにもな車が林道に入って行ったので後をつける。

 

どこから湧いてきたのか2-3組の網持った集団が固まっていた地点があった。ここがポイントか~と思いながら端っこに陣取る。

 

ボケっとしていると9時半になった。セオリー通りならそろそろ飛ぶかな~と思って空を見上げる。

 

なにも飛ばないんすけど.

 

いや、黒いのは飛んでるけどアレってリュウキュウツヤハナムグリとかハチでしょう。狙いのものはもっと細長いはずだ。属単位で未採集だからよく分からんけど。

 

イジュの花も1本だけあったがほかの集団が占有していて掬えやしない。アマミヨツスジハナとかいたらしいけど、うん、別に…

 

しょうもねえーと思って頭上の木を見上げているとなんか漢字の「八」がふわふわ飛んでいる。

 

頭に「???」を浮かべながらネットインするとなんとアマミモモブトコバネカミキリ!やったね!

 

こんな感じで飛ぶのね~~~ってことでウロウロ徘徊しながら捕まえまくる。

 

周りの同年代っぽいヤツらはこいつを掬うたびに騒いでいたが30分で飽きるほど採れたのでいっぱいいるんでしょう。ただ、「八」すべてがカミキリではなく、アマミフサヒゲカッコウムシ(だっけ?)も混じっているのでいちおう全部掬ってみた。

 

この日は結局「ヤツ」は飛ばず。その代わりにカミキリの大先生とか、某図鑑の標本提供者とか、ぼくでも名前を知ってるようなすごい人たちが飛来してビビった。

 

余談だが、迎えに来た後輩の車に戻る途中のイジュを掬ったらアマミヨツスジハナがあっさり採れた。

 

…まあ、ヨツスジハナだもんね。

 

午後は非の打ち所がひとつもない宿にチェックインし、クワガタがいそうなみかん畑を探しに。地形図を頼りに細い道を走らせる。

 

…樹液出てないんですけど!!!

 

みかん畑さえあれば楽勝と聞いたがそうでも無いようだ。クワガタは来年以降にまわすか…というあきらめの気分になった。

 

肩を落としてとぼとぼ歩いていると、白い蝶がふわふわと目の前を横切った。

 

…あれ、フタオチョウじゃないのか?

 

ホントにいるんだーと思いながら目で追ってみる。1度は遠ざかったが所詮は蝶、待っているとふらふらと近づいてきた。蝶なんてのろい生き物、オオヒゲブトで鍛えたぼくの敵ではない。華麗にネットインした。

 

(写真はありません)

 

不完品だったら逃がそうと思っていたが完品だったので慎んでキープ。たまたま別のところにいたT君に見せると、「あああ…」と崩れ落ちる100点満点のリアクションをしてくれたので笑った。

 

福岡に帰って他の蝶屋に見せびらかした時も同じ反応だったし、そんなにいい蝶なのか…と少し驚きである。

 

 

 

その後は夜になったのでテキトーにライトをたいた。

オキナワシロスジコガネくらいしか欲しい虫は来なかったが、夏の南西諸島のライト史上最もたくさんの虫が来た。

 

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しょぼいHIDライトだけだとこんなもんです… トウカソウケンかクレナータが欲しい、初任給で買います

 

あまり天気が良くなくてこれなら、ピーカンの奄美は楽園なんだろうな…と感じさせられた。

 

この日はみかん畑が見つからなかったので日付が変わったあたりで宿に帰って寝た。

 

10日目.

 

この日も吹き上げに立ったが、八の字しかいなかった。ポイントには諦めムードが漂っており、11時過ぎには人が消えるというまさかの事態に。

 

うーん…今更来ても遅かったのかな…

ヤツが採れない可能性は高いけど、午前中他にすることも無さそうだし滞在中はここに通おうかな、吹き上げだからアカホシゴマダラとかフタオチョウとか採れるかもしれないし…

 

とこの時にした消極的判断が後にターニングポイントになるとは、この時は思いもしなかった。

 

午後は伐採地へ。

A君は材に来るハチ、ぼくはオオシマミドリカミキリを探したが雨が降ったようで材が濡れており、それどころではなかった。

 

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1本に4-5頭ついてるフェリベニのご神木は見つけたが…

 

この日はそこら辺でライトを炊いたら訳分からんおっさんに「第二種区域だから採集禁止!」といわれたり(自然公園法上はグレーなんだっけ?)、帰り道が軽い土砂崩れを起こし大変な目にあったりと散々だった。何故こんな目に…

 

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ハブはいた。ぼくは奄美での金ハブ遭遇率が異常に高い。銀ハブが見たいのに…

とっ捕まえようかと思ったが万が一咬まれたらいろいろシャレにならないのでやめた。

 

11日目.

この日も朝から吹き上げへ。

 

ナニコレ誰もいないんですけど.

 

もうみんな見切り付けちゃったのかな~と思いながらポイントを独り占めし、好きな音楽を流しながら優雅にムシを待つ。

 

どうせ来ないだろうけどのんびりしよう、迎えは昼まで来ないし、このポイントを独り占めすることなんてもうないだろう(超超超有名ポイントなので)し…

 

いつも通り八の字を捕まえて遊んでいると、大きめの虫がふわふわとやってきたのでネットイン。

 

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!!!!

これアマミリンゴじゃん!!!!初めて見たわ!!!

なんかぽつぽつ飛んでくるぞ!!!

 

ふと見上げた木はタブノキだった。これがホストか~~

 

でもここでアマミリンゴ採った虫屋はここ3日間いなかったし…

 

ひょっとすると雨の影響が少なくなってひょっとするのか?

 

空を見上げる。

 

林道の向こうから、今までに見たことがない細い虫が飛んでくるのが見えた。

 

心拍数が急上昇する。ぜったいヤツだ、そうに違いない!

 

網を一閃、入らねえ、セカンドリカバリー、ダメだ…

 

ラストチャンスじゃ~~~~入れ~~~~

 

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はい、

 

アマミホソコバネカミキリ、通称モリヤイゲットじゃい!!!!!

 

良かった良かった…本当に良かった…

 

ネキダリス初採集がモリヤイというのは九州本土であまりまじめに虫採ってないだろ感は否めないが、まあそれはそれで別の話ということで…

 

しかしハチみたいなカミキリだが、やはり甲虫なだけあってハチとは気品と風格のケタが違う。いい虫だこれは…

 

この日はこれ1頭だったが明日に希望が持てそうだ。うん!

 

この後は某所で炊いたライトにアマノコが来たり(来年以降はあそこにバナトラ仕掛けよう)、完全ノーマークの林道で黒ウサギが飛び出してきたり、しょうもないガードレールにアマミイシカワが大量にくっついていて萎える等、非常に奄美らしい1日になった。

 

 

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個体数が多めなのは歓迎すべきことなんだろうけど、もう少しわきまえてほしいな、ほしいな。

 

あほなマニアに密猟されたらどうするんだ、ほんと…

 

12日目.

 

吹き上げポイントにはおじいさんとモリヤイがいっぱいいた。満足する個体数は得られなかったしまた来年行くことにしよう。

夜はライトしたりクワガタを探したりしたが特筆すべき出会いはなし。

3時まで運転してたら意識を失いそうになったのでA君に運転してもらった。ありがたい…

 

13日目.

午前中はモリヤイポイントへ行ったがヌル。コンディションはよかったので発生が終わったのだろう。

 

網を草むらに立てかけてぼんやりしていたらブーメが入っていて爆笑した。

 

昼は絶品、フェリー乗り場近くの豚骨を食べたのち車を返し、飛行機に乗って福岡に帰ったがあっという間についてびっくりした。

 

全体的に天気が悪かったのと発生状況がめちゃくちゃだった(前者に関しては、雨が降ったおかげでカエルはいっぱい見られたから別にいいけど)が、最低限の目標種は採れたので良かった。

 

いろんな人が言っている「採れない時こそ頑張って狙う」という意識の大切さを身をもって実感した、ので今後もこのスタンスで頑張っていきたい。

 

今回採れなかったので、社会人になってから大型のアマミノコを狙いに行きたいけど、いろんな意味で険しい…