昆虫採集を本格的にはじめた3年前、学部2年生の春に出会い、恋焦がれ、狙い、無惨に撃沈した虫が2種類いる。
彼らのことは毎年春になると思い出し、その度に悔しくて泣きながら眠ったものだ。
1種目は、モンクロベニカミキリ。
こいつは去年やっとこさ落とすことが出来た。
そしてもう1種は、フタスジカタビロハナカミキリ。
通称キマルと呼ばれる黄色くて丸っこいカミキリだ。
その容姿に負けず劣らず、その生態も可憐なものだ、ともっぱらの噂である。
というのも、山に咲くヤマシャクヤクという花にやって来て、花の中に潜り込むという童話に出てくる妖精のようなたいへんに絵になる光景を見せてくれるのだという。
なぜ伝聞口調なのかといえば、3年前はツリボリ採集だったのに採れなかったからだ…
んで、なんでこの歳までリベンジもせず悶々としていたかというと、キマルは九州にはいない!ということになっていて、採るなら広島か四国まで行かないといけなかったから。
しかし、関東に越してきて調べてみると、比較的近場でも採れるという!これは行くしかないでしょう!
ということで行ってきた。
写ってるのはアナグマさんです
標高1000mそこそこでブナ筆頭の落葉樹林だったのでさすが関東だな〜なんて思ったが、よく良く考えれば脊振のブナ林とかも標高1000mちょいだよな…
さてさて、キマルを採るからにはヤマシャクヤクがないとお話にならない。裏を返せばヤマシャクヤクさえあれば勝ったも同然だ。
斜面登っていきましょうね〜
あった。
ドキドキしながら花びらをそっとめくってみる。
いねぇ。
そんな甘い虫じゃねえか。
まあでも、とりあえずヤマシャクヤクが1株見つかったなら周りに30株はあるはず(?)だからそのうちのどれかにはいるでしょ…
ということで山を這い回る。
…
あれ〜花がないぞ〜?
ヤマシャクヤク自体は割とあるのだが、どれも小さかったりまだつぼみだったりでキマルの影はさっぱり。
そう、これがキマル採集の難しいところ(らしい)。
ヤマシャクヤクの開花時期がいまいち読み切れないのだ。
巷では同一地域でもやれ5月2週に採れただの、5月3週は遅いだの、5月末に行ったけどまだ早かっただのといまいち要領を得ない。
花がなくてもキマルは来るらしいけど、うん…花の中にいる個体が見たいよ…
ここで長考。
3年前にヤマシャクヤクの群落があったのはかなり鬱蒼としたササヤブの中だった。
だから陽当たりの悪いところを探していたが、よく良く考えれば最初のヤマシャクヤクを見つけたのは割と陽当たりがいい所だった。
んじゃあ陽当たりのいい斜面をずっと登って探してみましょうかね。
というわけで探す場所を変えると、
ありました、群落。
割と花も開ききってるし、蜂だか虻だかハエだかよく分からん虫も来てる、これはよいですね。
というわけで20株くらい地道に見て回った時だろうか。
他とは明らかに気品が違う虫がそこにいた。
フタスジカタビロハナカミキリ Brachyta bifasciata japonica
う〜ん…最高だ。
もういっちょ。
大勝利ですね。
時計を見るといい時間だったので帰ることにした。
帰り道に土場でクリストフコトラカミキリを採った。やったね!
…
やはり、憧れの虫が普通種へとランクダウンしていくのは嬉しい反面、寂しいものがある。
関東ではそういったフクザツな感情を沢山味わえるよう頑張って(?)いこうと思う。