両爬虫道を往く

博士にもひとかどの生き物屋にもなれなかったおじさんの日記帳 誤同定等ありましたらお気軽にコメントどうぞ

向かうべき島がある それが運命(さだめ)

南西諸島に行かねえ夏なんてありえない。ましてや輝かしき余生の最後の夏に。

 
…というわけで、3月末に内々定を貰った瞬間からあるビックプロジェクトを立ち上げた。
そして6月末のある日。福岡空港

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LCC より快適なJTA最終便に乗り込んで、産まれた夏を追いかけるため、都会へサヨナラして一路南へ飛ぶことにした。

 

移動日含め12泊13日、与那国島スタート奄美大島ゴールの大規模採集遠征、

 

さあ、始まるざますよ
行くでガンス
フンガー!
まともに始めなさいよっ!

 

 

 

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中継地点の那覇に着いたのでルートビア飲んで寝た。カメラを忘れたのでprocameraというアプリをダウンロードしたが、撮影地点の地名を読み込む優良アプリだった…

 

(実質)初日.

6時過ぎに空港入りし、与那国島行きの飛行機へ。那覇→与那国は金がかかるのと朝イチの便ということに目をつぶれば他の方法より楽でいい行き方であろう。

 

と、言うわけで1時間半ほどプロペラジェットに揺られ、2年振りのどなんへ。

 

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空港でぼんやりしている間は感慨も何も無かったが、迎えの車の窓に映る景色を見ていると懐かしさと与那国に来た実感とで胸がいっぱいになった。

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おなじみの与那国ホンダで原付バイクを借り、時計を見ると9時半。

ありゃ、これならまだアレが採れるな、ということでポイントへ。

ぬるぬるとルッキングしながら夏空の下を歩いていると、

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枝の一部が青く輝いている…

 

網を蒼の下にあてがい、軽く枝を枠でつつくとぽろりと落ちた。手元に引き寄せ中を覗き込むと…

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与那国固有種ことノブオオオアオコメツキ。いい虫ですねぇ…

 

いい虫だが2年前に採った虫なのでがっついた採集はしない。

貴族のように路上をテキトーに歩いてテキトーにルッキング、網をあてがうだけで1-2分に1頭のペースで網に入る(その半分の数は落とす)。今年はバカみたいに個体数が多いと思ったが他の人は全然採れていないとのこと。どうやら2年前に立てたぼくの仮説は当たっているようだ…

 

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「今日のテーマは『正しいノブオオオアオの盗み方』だ」

「重要な話をするからよく聞きたまえ伊里野特派員! 明日のためにその一! 攻略すべきポイントは三つ、すなわちカラスザンショウ、マズメ、トレードオフだ!(以下略

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ノブオオオアオはいい虫だ。某オークションで取引されているのを見たこともある。価値を見いだしうる虫なのであろう。

 

だが、ポイントを押さえれば真夏の与那国で汗だくになりながらスイープしたり、電線に怯えながら空中戦を繰り広げなくてもいい「行けば採れる虫」であると個人的には思う。何故か?

 

2年前に熱中症になりながら色々研究したからだ!!!!

 

というわけで、その研究成果をここに記して行こうと思う。2年前のぼくみたいなアホな若者の一助になれば幸いである。

 

 

まずホストについては、クマゼミがしこたま引っ付いたカラスザンショウが有名(下写真参考)

 

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だが正直樹液や花なら何でもいいと思われる(謎の花とショウロウクサギの樹液で確認済)。バナトラにも来る。では何故カラスザンショウか?

 

その答えは「サキシマヒラタが居ないから」だとぼくは考えている。

 

ノブオオオアオは意外と好戦的で、同種間やチャイロカナブンとで樹液をめぐって争っているのが観察される。とはいえ、クワガタに勝てるわけもないのでエサ資源が豊富かつ競争が少ないカラスザンショウに群がっている…と考えているがどうだろう。

 

次に時間帯。飛翔個体は早朝と夕方に多く見られる。

魚と一緒で朝マズメと夕まずめがあるのだ。

 

前者はのんびりと低いところを飛びカラスザンショウに止まり、後者は高いところを飛ぶ。

というわけで、林道に立ち、待ち伏せをすることで貴族採集が出来るというワケ。

 

最後にスイープについてだが、ノブオオオアオは下に網をあてがい、枝を軽く揺らすだけで落ちる。では大きな網の方がいいかというとそうでもなく、枝が張り巡らされたところにいる個体も多く、そういう個体が欲しければ小さい網が必要になる。

網が大きければ逃すリスクは抑えられるが、採る機会数は狭まる。小さい網はその逆、ということ。

 

まあ、2種類あるに越したことはないだろう。

 

余談だが青いのはホスト周辺の下草についていたり立ち枯れにいたりもするので、そういった部分をくまなく探すことも重要なポイントである。

 

また、ノブオオオアオは狙えば狙うほど採れる虫であり、採集に関しては自重が必要である。良識ある昆虫採集を心がけるべきだろう。

まあ、大して変異もない虫なので1日に5頭もとればお腹いっぱいだろう。

 

 

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ヨナグニチャイロカナブン。固有亜種らしい。ノブオオオアオ1頭採るためのスイープで20位入る。鬱陶しい。

 

そんなこんなで1日の満足する個体数が採れ、ノブオオオアオ採集に1時間で飽きた、ので、蝶にシフトする。

 

とはいえオオゴマダラツマベニチョウ以外の蝶なんぞ知らんので片っ端から別々の種類に見えるヤツらをネットインする。後で鱗翅屋の方に見てもらうのだ。迷蝶が入ってたらいいけど。

入ってたら追記します…

 

並行して草むらも見るが、ヨナグニアカアシカタゾウムシも少なく、でかいカメムシ(名前忘れた)も幼虫でありつまらない…

 

思い切ってポイントを移動する、と、坂の途中にヨナグニシュウダ!

…バイク停めるのに手間取ってたら逃げられました。カスかな?

 

10代の頃の僕だったら原付バイクを投げ捨てぶっ壊してでもシュウダにダイブしていただろうが、もう4回生である。そんなメンタルはもうどこにもないのだ…

 

成長、もとい老いを実感してちょっと悲しくなったところで迷蝶で有名な山に登ったがただ疲れただけで終わった。

また、数年前にタマムシやトラカミキリが多産した土場にも行ったが、材が腐っていて何もいなかった。

 

こんな感じでロケハン・思い出の地巡りをして終わり。夕方宿に帰って仮眠して起きたら翌朝の4時になっていた。

 

2日目.

朝から山でカラスザンショウを引っ掻き回していたが、1時間せずノブオオオアオ採集に飽きた(2回目)のでとある山へ。

 

ここはかのヨナグニマルバネクワガタで有名な山だが、別に種保を犯そうというわけでなく、スイープしたいスダジイが多いから来たのだ。

 

八重山スダジイでスイープ。これらから導き出される虫といえば…?

 

 

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そう!世界で1番かっこいいカミキリことPeblephaeus!である!

奄美沖縄諸島におけるホストはアカメガシワらしいがここ八重山ではスダジイで多く得られるという。

与那国にはウスイロフトとノブオフト、いずれも固有種の2つが分布している。んで、これはウスイロフト。未採集種であり飛び跳ねるほど嬉しかった。

 

スイープを続けるとノブオフトの方も採れて大満足。いや~いい虫だ…

 

お腹がすいたので集落に降りる。与那国には久部良・比川・祖納の3つの集落があり、それぞれに売店があるが、ぼくは比川共同売店の圧倒的信者である。理由は、

・ポークたまごおにぎりがある

ルートビアがある

・うるまとマイセンライト(たばこ)が売ってる

 

素晴らしい環境だ。石垣のマックスバリュやいま店と双璧を為す素晴らしさである。是非とも行って買い物をして欲しい。

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午後も何やかんやした。両爬が色々いた。

 

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やえやまいしがめ。ここのは持って帰れる。

 

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ぴんぼけサキシママダラ。臭いので手で持たなかった。

 

夜になったのでいよいよライト…なんだけど、とある問題が生じた。それは…

 

強風.

 

風速8mとか頭おかしいんかと思いながら点灯。

いおりん1号(アマゾンで買った中華ライト、明るい・USB充電・バッテリー長持ちのデキる美少女だが、小さい電球の寄せ集めで遠くの山を照らすのには向いてない)の実戦初登板だが、ガが全然来ねえ(採らんけど)…

 

 

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でもキマダラミヤマは来た。たぶん与那国亜種。ありがとうございます…

 

虫が来ないので2時間で撤収。原付で山を滑り降りていると目の前にバカでかい装甲が。

 

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ヤシガニだぁ~

思わず叫んでしまった。

 

この島はヤシガニが非常に多く、毎晩山道や道路にいた。こんだけいるなら今度来た時に捕まえて食べてみようかしら…

 

さて、夜の島と言えば街灯巡りが定番だが、この島はヨナグニサン保護の観点からLED化が進んでいる。

 

ということで街灯には目もくれず宿に帰っていたが、ひとつだけ虫がたかっている明らかに他と違う街灯が。

 

ストーーップ

 

大半はガや駄コガネといったお呼びじゃない連中だったが、路上に場違いなほどエレガントな生き物が。

 

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昔からカマキリが好きで色々探していたが、この年で初めてウスバカマキリを見た。これで国産カマキリは全部みたぞ!(ヤサガタ?知らない子ですね…)

 

また、コウモリがバタついていると思ったらヨナグニサンだった。でかい。

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朝に道端で死んでいる個体を見つけてロードキルを疑っていた(車のヘッドライトに突っ込んでくるらしい)が、街灯に誘引されてたのか…

 

なんやかんやで1時半頃宿に帰って寝た。

 

3日目.

この日もノブオオオアオに飽き、蝶をテキトーに採り(ツマベニチョウがやっと採れた)、Peblephaeusの追加を狙ったがスカり、坂の下のシュウダに逃げられ(次は車で行こう)、仕方が無いので西崎で青空を眺めたりアニメ版AIRのopよろしく防波堤?の上をスキップしたりして過ごした。

 

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そら.

下が海なのでこういう雲がある空が好きです。ひまわり畑なら雲量0一択だけど…

 

 

 

午後はスコールが降り、蒸し暑くて死にそうになったので空港へ。ぼけっとしてたら隣に来た蝶おじさんにミナミコモンマダラのことを教えてもらい、どうせならと狙ったがスカ。過去の採集品に入ってたらいいなあ。

 

ライトするため山に行ったらなぜかヨナグニサンと並走することになって爆笑した。

 

ライトにはヨナグニゴマダラカミキリとサキシマヒラタが来た。

 

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余談だが、今回はキボシとゴマダラを全く見なかった。別に2年前に採っているから欲しくはないが印象的だったのでメモ.

 

一晩中シュウダを探して島中を駆け巡ったり、ヨナグニジュウジクロカミキリを狙ってビーティングをしたりしたが、イツホシシロカミキリが採れたのみ。たぶん石垣のと変わらないだろう…

 

4日目.

起きたら原付を返す時間だった。ということで散策をしなかった。

乗る予定だった飛行機が欠航し、6時間近く空港に軟禁され頭が痛くなった。

 

虫に関してはもう心残りはない(迷蝶にハマったら別)だが、シュウダを手づかみしてないため、またこの島には来るだろう。

 

次来る時は居酒屋でカジキやヤシガニをたらふく食いたいなあ。というしょうもない〆.

 

石垣島編へ続く…