大昔、一般性少年少女と同じように、それ以上に、クワガタというものがぼくは好きだった。
彼らは今以上にありふれた普通種だったが見る度にワクワクしたものだった。そんな純粋な期間はごくわずかだったけれども。
時は流れ、外国産クワガタにしか興味がなかった数年間、そもそも虫への興味を失っていた数年間、「ガキじゃねーんだからクワガタなんて採らんわ」という厨二病の数ヶ月間を経て、大学生活の後半から再び、クワガタにそれなりに熱中している。
ふとした拍子に「あ〜クワガタとりてー」という衝動が沸き起こってはその度にどっかに行っていた。
そして先週、何十度目かの衝動が沸き起こった。
現在ぼくの興味が向いているのは主にマルバネクワガタ筆頭に離島のクワガタがメインであり、まずは離島が候補に挙がったが今は時勢も時期も悪いし金も時間もない。
世間一般うんこガタ屋がよく言う「究極のクワガタ採集!」ことオオクワガタも考えたがいまいち興が乗らない。小学生の頃福島と山梨で採ったことがあるからだろうけど。
そもそも、世間一般でいうところの夏が終わりつつある今採れるクワガタなぁ、うーん…なんて考えていたら、あるクワガタのことをふと思い出した。
ヒメオオクワガタ。
そうだ!こいつがいた!よっしゃ行くぞ!
実は去年も1回行ったのだが、何故か時期に10月半ばをチョイスしたせいで採れなかった苦い記憶が蘇る。
ベストな時期はもうちょいあとっぽいけど、真夏でもいるらしいしなんとかなるっしょ!
…
8月某日.
土曜出勤せざるを得ない日があったので代わりに休暇を取った平日のとある日、ぼくは群馬県にいた。
本当は福島の有名産地(家から3時間で行ける)に行くつもりだったが、天気があまりよろしくなかったのでここをチョイス。
仮眠したSAでとんでもない雨が降っていて帰ろうかと思ったが、いざ現地に着くと天気はそれなりだった。
ぶらぶらと林道を歩く。
ヒメオオがつくのはヤナギやカンバといった木だが、ヤナギはともかくカンバなんて見分けられない。大学の実習で見分け方は習った記憶があるがんなもん覚えているわけが無い。
という訳で林道沿いの木をヤナギ7のその他3くらいのエフォートでじろじろ眺める。
あるヤナギを見ると、地上6メートル程のところにクワガタがいた。網を伸ばしてつついてみるが落ちてこない。
この時点でヒメオオではないな…と察したが、万一ということもあるので網の枠で半ば殴るようにガシガシやっているとぽろりと落ちた。
はい。
先へと進む。
いねぇなぁ〜発生してないのかな〜そんな事ないよな〜とか思いながらぶらぶらすること2時間。何十本目かのヤナギに目をやると…
これは…ヒメオオだよな?
ドキドキしながら網を伸ばす。
下は崖&薮だから勝負は1回こっきり。
そっと網を下にあてがい、枝をとん、と叩いただけで「それ」は2つの黒い塊に分裂してぽろりと落ちた。
これはきたでしょ!まさかアカアシではあるまいて!
網をたぐり寄せ、のぞき込む。
やったー!やったやった!ヒメオオじゃあ!
無人の林道で飛び跳ねて喜んだ。
サイズはまぁお察しではあるが、やはり初採集はとんでもなく気持ちいい。
このあと午後までフラフラして、極小のオスを1頭追加して終わった。
このポイントは9月に入ったらもっとよくなりそうだし再訪しないとな…
という訳で大勝利で〆。
こぶもとれた。